WonderNotes 学生の可能性を可能にするポータルサイト ワンダーノーツ

2011.07.04 UP

『127時間』

『127時間』@シネクイント

 

 

 

ダニー・ボイルって、フワフワしているイメージなんですが、抑えるところはきっちり抑えるという職人気質な人だと思います。

 

ドラッグ映画(『トレインスポッティング』)で大ブレイクしたと思いきや、ホラー映画(『28日後…』)を撮り、インド映画(『スラムドッグ$ミリオネア』)でアカデミー賞を受賞したり・・・ジャンルに留まらない、悪く言えば節操がない。そんな彼の最新作が実話を元にしたドキュメンタリータッチの作品なのです。

 

上手だけど、パンチが足りない。

クールだけど、表面的すぎる。

描写はリアルだけど、心に届かない。

 

など、「・・・だけど」という接続詞がフリになってしまい、肝心の映画としてはふんわりしてしまうのです。すべてが。

 

今作は、徹底的に暴力の映画です。自然という暴力にどう立ち向かうのか?

 

原作である登山家の自伝は未読なのですが・・・うーん。「あなたはこうなったときに、○○をできる?」という強い問いかけには、なっています。でも、その問いかけはフィクションです。実話かもしれませんが、我々にとってはフィクションです。ですからエンドロールのあの挿入は絶対にいりません。(というか

この映画に限りませんが)そもそも、フィクションである映画にノンフィクション要素を入れてリアリティーを出すという“悪しきしきたり”は金輪際やめていただきたい。

 

そんな挿入は言い訳です。実際にその人物がこの世界に生きているのか、いないのか、(映画にかんして言えば・・・)そんなの知ったことか!!

 

『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』@シネマライズ

 

 

 

恥ずかしながら、エドガー・ライトの新作を劇場で観るのは初めてです。

代表作である『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のどちらとも愛おしい大傑作ですが、DVD鑑賞だったのが心残りでした。(そもそも前者は日本公開されておらず、後者は有志の署名運動によりようやく公開されるレベルだったのです。どれほどアメリカのコメディが日本で迫害を受けているかが分かりますね)

 

エドガー・ライトをスクリーンで堪能できる! と心躍らせていたのですが、結論から言うと・・・寝てしまいました。僕の場合、「寝てしまった映画」というのは直接的に「興味深くなかった」という意味ではないところが難しいとことです。ここは説明がいるかもしれません。もちろん、内容が薄くてどうでもよくなってしまい寝る、ということもあります。しかし、真逆の考え方として「映画館で寝られるなんて、リラックスもできて、2時間を心地よく過ごせたんだから最高じゃないか」という想いも、多々あるのです。

 

結果、寝てしまった映画というのは評価が難しい。最高と最低のどちらでもあるわけなのです。僕にとっては。そもそも「面白い映画を観る」というのが目的ではなく、「幸せな2時間を過ごす」という目的が主で、前者は目的ではなく手段の1つなのです。

 

ギャグが弱いことを指摘するのも野暮なのですが、そもそもの物語の吸引力が弱いのは間違いないでしょう。元カレを倒さなくてはいけない、という大設定を引っ張る主人公の動機が弱い、という物語導入部分も眠気の要因でした。

 

『エンジェル・ウォーズ』はOKで、こっちはダメという線引きも自分でよく分かりません。つらい日常を妄想で生き抜かなくては、という同テーマとして並列で観るべき。できれば、『スコット〜』→『エンジェル・ウォーズ』という順番で。

『わたしを離さないで』@ル・シネマ

 

 

カズオ・イシグロの原作は読んでいないのですが、映画だけのメモをいくつか。

設定はSFなんですが、ハードSFではなくソフトSFなので、SF嫌いの人でも問題ありません。

 

問題なのは登場人物がほとんど、人間のダミーだということです。

・ダミーでも人の心があるのか?

・もしあるとしたら、それは人間とどう違うのか?

 

というのがテーマなのかもしれませんが、そこで安易に「ダミーも心があり、人間と同じ存在である」という考えにくみすると、もったいない作品だと思います。

 

本作でダミーは20代で死を迎えます。例外はありません。人間の寿命より圧倒的に短いわけです。

しかし、20歳で死ぬ人間と、80歳で死ぬ人間に本質的な違いはあるのでしょうか?

20代で死を迎える、いわゆる「圧縮された生」をどう生きるか?

80歳で死を迎えても、「圧縮された生」として生きることも可能ではないか?

その圧縮率こそが人生なのではないか、そう感じないと、安易なメロドラマとして流れてしまうような気がしました。

 

印象的なカットは、すべて周りに何もありません。

 

・海辺で登場人物3人が口論する

・誰も走らない道で男が叫ぶ

・一面の麦畑で女が遠くを見つめる

 

すべて、周りに建物もなく、人影もなく、何もないのです。

愛する人に呼びかけるのではなく、「地球よ、わたしを離さないで」と語りかけてくるようでなりませんでした。