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2011.04.24 UP

『婚前特急』

『婚前特急』@ヒューマントラストシネマ渋谷

 

 

 

「ドタバタ婚活コメディなのに、劇中に2回しか笑うところがないとはどういうことだ!!」という野暮な指摘はさておき、SAKEROCK浜野謙太氏の演技は素晴らしい。吉高由里子という女優は寡聞にして知らずなんですが、本作の主役は間違いなく浜野謙太演じる田無タクミですね。

 

タイトルに『特急〜』とつけてコメディとくれば、ルビッチの『極楽特急』を連想しないほうが難しいわけですが・・・タイミングの悪いことに、この映画を見た後、まさにルビッチの『天国は待ってくれる』を観てしまい、気分はもう戦争です。

 

「ハマケンを観に行く」、この一点張りというおおらかな気持ちで是非、お願いします。と言わざるを得ないんですが・・・

 

『エンジェル ウォーズ』@シネセゾン渋谷

 

 

 

「漫画(嘘)みたいなアクション」を堂々とやる。

「推理小説(嘘)みたいなストーリー」を堂々とやる。

「実話誌(嘘)みたいな裏世界」を堂々とやる。

 

この3つを極めて真剣に「ファイト」させる大傑作にふと出会ってしまうとは思いもしませんでした。

 

「5人の美少女が幻想的な戦いに挑むアクションファンタジー」なんてどうでもいい説明は完全無視です。

この世界では、「嘘が本当に」、そして「本当が嘘に」めまぐるしく変化していきます。

それらは、「アクションシーンが嘘に」、そして「嘘がアクションシーンに」という動きにも対応している所がニクさ倍増。

 

そこを突き詰め「映画が嘘に」→「嘘が映画に」を超えて、「映画が本当」への世界へと飛躍すらしているのです。これは恐ろしい。「本当の映画」とまでは言いませんが。

 

「そんなアクションシーン実際にはありえないよ!!」という総ツッコミに対しての解答が完璧。それらが有機的に組み込まれているところに洗練さを感じると共に、バカバカしいという奇跡。とりあえずあと2回は観に行きます。

『ザ・ファイター』@シネセゾン渋谷

 

 

マサチューセッツ州のブルカラー街ローウェルの物語ですが、ボクシング映画である前にこのローウェルの街描写が素晴らしい。これは主人公母を演じるメリッサ・レオの演技による“大家族あるある”のディティールが大きな効果を生んでいます。

 

まず、主人公の女兄弟が6〜7人いるのですが、ずっとアルコールを飲んでいます。そして、家で何もしないで、ギャーギャー騒いでいるだけというカオス状態。もちろん、彼女たちには日常なわけですが。

 

メリッサ・レオのお母さんとしてのメンチの切り方。目が据わっています。アカデミー助演女優賞もダテではありません。(『フローズン・リバー』に続いて脅威の怪演ぶりですね)

 

加えてマーク・ウォールバーグの筋肉。クリスチャン・ベールの歯並びまで壊した役作り。この映画は本質的には「肉体の映画」でしょう。そういった体の質感が説得力を与えるのは言うまでもありませんが、映画に向かって「戦って」います。ボクサーというファイターだけでなく、役というものへの「ファイター」、ここに集約されると思います。愛おしいブルーカラー映画として必見でしょう、コレは。