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『ブンミおじさんの森』@シネマライズ

 

 

1年に数回、「この映画を観て本当に良かったなぁ」という幸福な出会いがあります。もうそれは1人の大親友を見つけたようなものです。

 

去年の東京フィルメックスで観て、今年もシネマライズで観て、もう1回観る予定です。「大震災を経た今だからこそ、この映画をアクチュアリティを持って観ることができる」などと嘯くつもりはありませんが、体が覚えているのかもしれません。

 

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の過去作品を鑑賞できていないのは残念なのですが・・・いつも通り印象的なショットをいくつか記すくらいしか、今はできません。

 

・オープニングの水牛を舐めるようにしつこく追う

 

この出だしにはイカれました。「主人公は水牛か?」という直感と緊張感が3分は続いたと思います。もちろん、主人公はブンミおじさんと言えるとは思うのですが、ある意味ではこの水牛も主人公なのです。というか、この映画は主人公という概念すら怪しいです。水牛も、虫も、木々も、女王も、未来の子どもも、そして「時間」さえも主人公たりえるのです。それは監督の言う「一般的な輪廻は信じていないけど」という留保つきだとしても、ショットを観ていれば感じてしまう類のものです。

 

・ラストシーン直前の「時間」の分裂

 

この流れからPenguin Villaのポップチューン「Acrophobia」がかかる店内のシーンで現代に我々は引き戻されます。うまく言葉がみつからなく「分からない」という状況を肯定するつもりはありませんが、そもそも本当の意味で「分かる映画」なんて存在するのでしょうか?