2011.07.10 UP
『BIUTIFUL ビューティフル』
『BIUTIFUL ビューティフル』@ヒューマントラストシネマ渋谷
タイトルからしてスペルが間違っていますがが、それが真実だ。そんな囁きにも聞こえます。
主人公演じるハビエル・バルデムは子どもにこう聞かれます。
「お父さん、ビューティフルってどういう綴り?」と。
そこでの答えがタイトルにもある「BIUTIFUL」なのです。ここでは間違ったスペルが親から子へと伝えられます。決定的な間違いを。
でも、このスペルが間違っているから何だっていうのでしょう。子どもにとって「美しい」とは「BIUTIFUL」なのです。それが子どもにとっての真実なのです。(まさにソシュール的です。シニファン=シニフェの関係ですね。子どもにとってどんなシニファンかは関係ありません。シニフェの中で生きているのですから)
しかし、この映画は「美しいとは何か?」を問うものではありません。そこが支持できる部分です。けっして偽善ではない。むしろ、押し出されるのは偽悪です。
偽りの悪として、主人公はバルセロナを彷徨います。
彷徨いながら、生と死を行き来します。
印象的なショットのつなぎが2つあります。
「中国人約30人の死体」→「コカインが氾濫するクラブ」
この2シーンがつながります。つながるんです。
もう1つ。
「家族団らん」→「海辺に浮かぶ死体の数々」
このショットも連続します。カットが切り替わったら、即「生と死」です。
通俗的な「生と死」を表現した露骨すぎるショットのつなぎである、という批判もできるでしょうが、そんなものクソ食らえです。断固支持します