WonderNotes 学生の可能性を可能にするポータルサイト ワンダーノーツ

『わたしを離さないで』@ル・シネマ

 

 

カズオ・イシグロの原作は読んでいないのですが、映画だけのメモをいくつか。

設定はSFなんですが、ハードSFではなくソフトSFなので、SF嫌いの人でも問題ありません。

 

問題なのは登場人物がほとんど、人間のダミーだということです。

・ダミーでも人の心があるのか?

・もしあるとしたら、それは人間とどう違うのか?

 

というのがテーマなのかもしれませんが、そこで安易に「ダミーも心があり、人間と同じ存在である」という考えにくみすると、もったいない作品だと思います。

 

本作でダミーは20代で死を迎えます。例外はありません。人間の寿命より圧倒的に短いわけです。

しかし、20歳で死ぬ人間と、80歳で死ぬ人間に本質的な違いはあるのでしょうか?

20代で死を迎える、いわゆる「圧縮された生」をどう生きるか?

80歳で死を迎えても、「圧縮された生」として生きることも可能ではないか?

その圧縮率こそが人生なのではないか、そう感じないと、安易なメロドラマとして流れてしまうような気がしました。

 

印象的なカットは、すべて周りに何もありません。

 

・海辺で登場人物3人が口論する

・誰も走らない道で男が叫ぶ

・一面の麦畑で女が遠くを見つめる

 

すべて、周りに建物もなく、人影もなく、何もないのです。

愛する人に呼びかけるのではなく、「地球よ、わたしを離さないで」と語りかけてくるようでなりませんでした。

『英国王のスピーチ』@ヒューマントラストシネマ渋谷

 

 

ご存じ、本年度アカデミー賞作品賞。

 

まず断言したいんですが、主演のコリン・ファースの吃音演技が素晴らしいのは間違いないですね。

トム・フォードの監督デビュー作『シングルマン』でもそうでしたが、

コリン・ファースは台詞を喋っていないときの間の取り方が最高です。

 

さて、そんなコリン・ファースが演じるイギリス王ジョージ6世という役所は、

正直、僕はほとんど知りませんでした。

そして、「スピーチ」の重要さも。

 

官僚が作った文章を読む日本の大臣などのスピーチとは重要さが桁違いなのは言うまでもありません。

しかも、この映画ラストの演説から第2次世界大戦がスタートするわけです。

ラジオから流れるジョージ6世の演説によってです。

 

ラジオというと忘れられない映画があります。

それはウディ・アレンの『ラジオ・デイズ』。

これも第2次大戦後直後、ニューヨークのラジオを聞いていた少年の話です。

その少年がラジオから流れる名曲を聴きながら、

当時のニューヨーク家庭エピソードが連発される名作なのですが、

『英国王のスピーチ』と時代設定はほとんど同じです。

 

『ラジオ・デイズ』はエンターテイメントラジオを聞く側の物語で、

『英国王のスピーチ』は国営放送ラジオを発信する側の物語です。

 

イギリス王室知識がないからとは思いたくないのですが、『英国王のスピーチ』にはノレませんでした。その理由をココで挙げてもしょうがないので、印象的なカットを1つ。

 

・ジェフリー・ラッシュ(ジョージ6世のスピーチ先生役)の皺

 

これはさすがです。皺だけで演技できる、そんな事実に驚きました。

 

 

『トゥルー・グリット』@六本木TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
『ビッグ・リボウスキ』を観たのは、多分高校3年の時。
当時はオールタイムベスト10に入っていて、その気持ちはほとんど変わっていなく
最近では、『バーン・アフター・リーディング 』も含め、コーエン兄弟のコメディ系は文句なしに傑作が多いのは異論がないかと思われます。
問題なのが『ノーカントリー』に代表されるシリアス系の作品です。
コメディを突き詰めすぎて、シリアスになるのか、シリアス系の息抜きでコメディを撮っているのか、そんなことなど何も考えていないのかもしれませんが、イメージとしてはシリアス系とコメディ系を交互に撮っているイメージがあります。
この『トゥルー・グリット』もそんなシリアス系なのですが、西部劇です。
しかもリメイク。
『勇気ある追跡』を未見なので、西部劇を語れないのですが、
この映画は14歳の少女マッティが素晴らしい。
この少女を観るためだけでも価値がある、と断言したくもなります。
僕は映画は1つのシーンさえ印象的でさえあれば、物語や完成度などどうでもいいとすら思うときもあります。
マッティが「西」に出発する時に渡る川、それが本作のそれに当たります。
もちろん、『ビッグ・リボウスキ』主演のジェフ・ブリッジスが「元泥棒で大酒飲みの自堕落な男」という設定もニヤりなのですが、「マッティの川渡り」のシーンだけでも10杯はご飯が食べられる、そう思います。