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『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』@シネマライズ

 

 

 

恥ずかしながら、エドガー・ライトの新作を劇場で観るのは初めてです。

代表作である『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のどちらとも愛おしい大傑作ですが、DVD鑑賞だったのが心残りでした。(そもそも前者は日本公開されておらず、後者は有志の署名運動によりようやく公開されるレベルだったのです。どれほどアメリカのコメディが日本で迫害を受けているかが分かりますね)

 

エドガー・ライトをスクリーンで堪能できる! と心躍らせていたのですが、結論から言うと・・・寝てしまいました。僕の場合、「寝てしまった映画」というのは直接的に「興味深くなかった」という意味ではないところが難しいとことです。ここは説明がいるかもしれません。もちろん、内容が薄くてどうでもよくなってしまい寝る、ということもあります。しかし、真逆の考え方として「映画館で寝られるなんて、リラックスもできて、2時間を心地よく過ごせたんだから最高じゃないか」という想いも、多々あるのです。

 

結果、寝てしまった映画というのは評価が難しい。最高と最低のどちらでもあるわけなのです。僕にとっては。そもそも「面白い映画を観る」というのが目的ではなく、「幸せな2時間を過ごす」という目的が主で、前者は目的ではなく手段の1つなのです。

 

ギャグが弱いことを指摘するのも野暮なのですが、そもそもの物語の吸引力が弱いのは間違いないでしょう。元カレを倒さなくてはいけない、という大設定を引っ張る主人公の動機が弱い、という物語導入部分も眠気の要因でした。

 

『エンジェル・ウォーズ』はOKで、こっちはダメという線引きも自分でよく分かりません。つらい日常を妄想で生き抜かなくては、という同テーマとして並列で観るべき。できれば、『スコット〜』→『エンジェル・ウォーズ』という順番で。

『モア・ザン・ア・ゲーム』@ヒューマントラストシネマ渋谷

 

 

 

NBAを代表するスモールフォワード(実はポイントガードからパワーフォワードまで4つのポジションをこなせるのですが)の中学、高校時代を追ったドキュメンタリー作品。

 

ポイントはレブロンの学生時代を掘ったものではなく、あくまでもチームの友情を中心に5人の中の1人として、レブロンが描かれている所です。

 

ここにレブロンのマイアミ移籍の秘密が隠されていました。一般的にはクリーブランドを裏切ったレブロン・・・という認識かもしれませんが、レブロンにとっては「土地より友」なわけです。つまり、ウェイドとの友情こそが大切であり、より具体的な選択をしたのでしょう。

 

デジタル上映なのが難点ですが、それを差し置いても傑作です。NBAファン、レブロンファンでなくとも楽しめます。

 

バスケで勝つことが目的ではない、人が成長することが目的。バスケで勝つことは手段に過ぎない。このテーゼは「バスケ」を「人生」に置き換えても通用する強いメッセージです。手段と目的、これを無意識に同時に追い求めるアメリカの力強さが胸に染みます。

 

 

『ブルーバレンタイン』@新宿バルト9

 

 

 

ある夫婦の「はじまり」と「おわり」をカットバックで丹念に追っていくラブストーリー、と一言で説明するとそうなります。

 

僕は映画に限らず、文学・音楽・粘土・落書き、何でもいんですが「なぜこの時代に生まれたのか?」を重視する傾向にあります。その理由は「作品は少しでも前進すべきである」という理想主義だからです。いつまでも過去の繰り返しでいたら、そのジャンルは停滞するに決まっています。例えば、時代設定が1920年のラブストーリーは徹底して1920年に寄り添わざるを得ません。そこに徹底することでしか作品は生まれないはずです。問題は、その後です。その時代を映し出すという「目的」があるのであれば、その時代を映し出す「手法」も前進してこそ、残り語り続けられるべき作品となるはずです。

 

そういった意味で『ブルーバレンタイン』の構造は、「2000年代初頭のアメリカ夫婦生活」を「カットバック」で追っていきます。例えば、これを戦前の日本に置き換えてみると「1920年初頭の日本の夫婦生活」を「カットバック」で追っていく作品となり、なんら変わりません。なにか観たことのありそうな映画じゃありませんか。

 

そして大問題なのは、説明過多なところです。こればかりは「お前の好みだ!」と言われればそれまでなのですが、台詞で主人公の吐露を説明するのはスマートではないことなど自明でしょう。

 

と、そもそも論から入ってしまいましたが、実はこの映画を大嫌いではないのです。ディティールはキテます。2人が喧嘩しながらも入るラブホテルの部屋名が「未来」だったり、旦那のマルチクリエイターぶりから生まれるラブソングの2種類の使い方、などなど素晴らしいシーンもたくさんあります。

 

で、す、が、「10年以上も脚本を練った」という事実は、こっそり教えてほしかったものです。そんなハードルは飛び越えにくいものです。