2011.04.08 UP
『わたしを離さないで』
『わたしを離さないで』@ル・シネマ
カズオ・イシグロの原作は読んでいないのですが、映画だけのメモをいくつか。
設定はSFなんですが、ハードSFではなくソフトSFなので、SF嫌いの人でも問題ありません。
問題なのは登場人物がほとんど、人間のダミーだということです。
・ダミーでも人の心があるのか?
・もしあるとしたら、それは人間とどう違うのか?
というのがテーマなのかもしれませんが、そこで安易に「ダミーも心があり、人間と同じ存在である」という考えにくみすると、もったいない作品だと思います。
本作でダミーは20代で死を迎えます。例外はありません。人間の寿命より圧倒的に短いわけです。
しかし、20歳で死ぬ人間と、80歳で死ぬ人間に本質的な違いはあるのでしょうか?
20代で死を迎える、いわゆる「圧縮された生」をどう生きるか?
80歳で死を迎えても、「圧縮された生」として生きることも可能ではないか?
その圧縮率こそが人生なのではないか、そう感じないと、安易なメロドラマとして流れてしまうような気がしました。
印象的なカットは、すべて周りに何もありません。
・海辺で登場人物3人が口論する
・誰も走らない道で男が叫ぶ
・一面の麦畑で女が遠くを見つめる
すべて、周りに建物もなく、人影もなく、何もないのです。
愛する人に呼びかけるのではなく、「地球よ、わたしを離さないで」と語りかけてくるようでなりませんでした。