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『わたしを離さないで』@ル・シネマ

 

 

カズオ・イシグロの原作は読んでいないのですが、映画だけのメモをいくつか。

設定はSFなんですが、ハードSFではなくソフトSFなので、SF嫌いの人でも問題ありません。

 

問題なのは登場人物がほとんど、人間のダミーだということです。

・ダミーでも人の心があるのか?

・もしあるとしたら、それは人間とどう違うのか?

 

というのがテーマなのかもしれませんが、そこで安易に「ダミーも心があり、人間と同じ存在である」という考えにくみすると、もったいない作品だと思います。

 

本作でダミーは20代で死を迎えます。例外はありません。人間の寿命より圧倒的に短いわけです。

しかし、20歳で死ぬ人間と、80歳で死ぬ人間に本質的な違いはあるのでしょうか?

20代で死を迎える、いわゆる「圧縮された生」をどう生きるか?

80歳で死を迎えても、「圧縮された生」として生きることも可能ではないか?

その圧縮率こそが人生なのではないか、そう感じないと、安易なメロドラマとして流れてしまうような気がしました。

 

印象的なカットは、すべて周りに何もありません。

 

・海辺で登場人物3人が口論する

・誰も走らない道で男が叫ぶ

・一面の麦畑で女が遠くを見つめる

 

すべて、周りに建物もなく、人影もなく、何もないのです。

愛する人に呼びかけるのではなく、「地球よ、わたしを離さないで」と語りかけてくるようでなりませんでした。