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前回書いたように、『キッズ・オールライト』の期待値が低かったせいもあり、幸せな2時間を過ごせました。

 

>「期待感」と、作品と我々の「距離感」が密接に関係している

 

これは期待感が強ければ強いほど、劇場において映画との距離感が縮まるんだと思います。近すぎる視点で観ると、どうしても盲目になりがちです。かといって客観的に観すぎても響くはずもありません。

 

ここも作品以前の話なので、また微妙なニュアンスになってしまうのですが、「客観的に個人的に観る」という状態が理想なのではないのでしょうか。そうするためには、前情報をシャットアウトするしかないのです。そして、劇場で前のめりできるだけ前のめる。これに尽きるでしょう。

 

ようやく『キッズ・オールライト』の話ができるんですが、決して「新しい家族のカタチ」を安易に提示しないエンディングに感銘を受けました。

 

むしろ「新しい家族ってそんなのは存在せず、あなたの家族しかあなたの世界には存在しないんだからね」と優しく囁きかけてくれる、そんなポジティブだけに留まらないメッセージに好感を持ちました。

 

タイトルも『ファミリー・オールライト』ではなく『キッズ・オールライト』。あくまでも、子ども目線なのです。この目差しがこの映画全体を支えています。傑作です。

『キッズ・オールライト』@シネクイント

 

 

 

 

言うまでもないんですが「期待感」というのは重要です。

「ハードルを上げる/下げる」など、もはや日常語として定着した感がありあすが、映画の場合はどうでしょう。

 

僕自身は映画を観る前に、あらすじ・批評・紹介文などから、できる限り目をそらすという方針で臨んでいます。

 

しかし、どうしても入ってきてしまう情報もあります。意識的にオフィシャル情報をシャットアウトしても、「かなりいいらしい」「今年ナンバー1クラスだ」など、抽象的な声は聞こえてしまうものです。これは仕方ない。

 

こんなことは可能なんでしょうか?

 

「その映画について、全く知らないで観る」

 

全くということは、タイトルも知らないわけですから、それはあり得ません。さらに、自分がその映画を観に行っているということは、多少なりとも(当たり前の話ですが)「観たい」と思っているわけです。(知人に無理矢理脅されて座席に座っていない限り)

 

ということは、どんな情報にせよインプットされているわけです。

つまり、原則的には「その映画について、全く知らないで観る」などあり得ないのです。

 

話は戻ります。もちろん、情報は少なければ少ないほど、感動は高まるでしょう。しかし、情報がなれば映画を観に行くことはできない。この矛盾が悩ましいのです。

 

そこでこの『キッズ・オールライト』です。僕はこの作品の予告編を劇場で5回は観ていると思います。それに対して、紙からの情報はほぼゼロ。Twitter上では、映画を褒める良いツイートを2〜3読んだくらいです。

つまり、ほとんど内容を知らないことになります。(とはいえ、予告編上でのなんとなくの物語ラインはイメージできてしまいましたが)

 

このくらいの「期待感」というのは悪くない気がします。

そして、この「期待感」と、作品と我々の「距離感」が密接に関係しているような気がするんです。(この話はまた後で)

 

そして・・・(続く)

 

 

『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』@シネマライズ

 

 

 

恥ずかしながら、エドガー・ライトの新作を劇場で観るのは初めてです。

代表作である『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のどちらとも愛おしい大傑作ですが、DVD鑑賞だったのが心残りでした。(そもそも前者は日本公開されておらず、後者は有志の署名運動によりようやく公開されるレベルだったのです。どれほどアメリカのコメディが日本で迫害を受けているかが分かりますね)

 

エドガー・ライトをスクリーンで堪能できる! と心躍らせていたのですが、結論から言うと・・・寝てしまいました。僕の場合、「寝てしまった映画」というのは直接的に「興味深くなかった」という意味ではないところが難しいとことです。ここは説明がいるかもしれません。もちろん、内容が薄くてどうでもよくなってしまい寝る、ということもあります。しかし、真逆の考え方として「映画館で寝られるなんて、リラックスもできて、2時間を心地よく過ごせたんだから最高じゃないか」という想いも、多々あるのです。

 

結果、寝てしまった映画というのは評価が難しい。最高と最低のどちらでもあるわけなのです。僕にとっては。そもそも「面白い映画を観る」というのが目的ではなく、「幸せな2時間を過ごす」という目的が主で、前者は目的ではなく手段の1つなのです。

 

ギャグが弱いことを指摘するのも野暮なのですが、そもそもの物語の吸引力が弱いのは間違いないでしょう。元カレを倒さなくてはいけない、という大設定を引っ張る主人公の動機が弱い、という物語導入部分も眠気の要因でした。

 

『エンジェル・ウォーズ』はOKで、こっちはダメという線引きも自分でよく分かりません。つらい日常を妄想で生き抜かなくては、という同テーマとして並列で観るべき。できれば、『スコット〜』→『エンジェル・ウォーズ』という順番で。