2011.04.08 UP
『わたしを離さないで』
『わたしを離さないで』@ル・シネマ
カズオ・イシグロの原作は読んでいないのですが、映画だけのメモをいくつか。
設定はSFなんですが、ハードSFではなくソフトSFなので、SF嫌いの人でも問題ありません。
問題なのは登場人物がほとんど、人間のダミーだということです。
・ダミーでも人の心があるのか?
・もしあるとしたら、それは人間とどう違うのか?
というのがテーマなのかもしれませんが、そこで安易に「ダミーも心があり、人間と同じ存在である」という考えにくみすると、もったいない作品だと思います。
本作でダミーは20代で死を迎えます。例外はありません。人間の寿命より圧倒的に短いわけです。
しかし、20歳で死ぬ人間と、80歳で死ぬ人間に本質的な違いはあるのでしょうか?
20代で死を迎える、いわゆる「圧縮された生」をどう生きるか?
80歳で死を迎えても、「圧縮された生」として生きることも可能ではないか?
その圧縮率こそが人生なのではないか、そう感じないと、安易なメロドラマとして流れてしまうような気がしました。
印象的なカットは、すべて周りに何もありません。
・海辺で登場人物3人が口論する
・誰も走らない道で男が叫ぶ
・一面の麦畑で女が遠くを見つめる
すべて、周りに建物もなく、人影もなく、何もないのです。
愛する人に呼びかけるのではなく、「地球よ、わたしを離さないで」と語りかけてくるようでなりませんでした。
2011.04.04 UP
『英国王のスピーチ』
『英国王のスピーチ』@ヒューマントラストシネマ渋谷
ご存じ、本年度アカデミー賞作品賞。
まず断言したいんですが、主演のコリン・ファースの吃音演技が素晴らしいのは間違いないですね。
トム・フォードの監督デビュー作『シングルマン』でもそうでしたが、
コリン・ファースは台詞を喋っていないときの間の取り方が最高です。
さて、そんなコリン・ファースが演じるイギリス王ジョージ6世という役所は、
正直、僕はほとんど知りませんでした。
そして、「スピーチ」の重要さも。
官僚が作った文章を読む日本の大臣などのスピーチとは重要さが桁違いなのは言うまでもありません。
しかも、この映画ラストの演説から第2次世界大戦がスタートするわけです。
ラジオから流れるジョージ6世の演説によってです。
ラジオというと忘れられない映画があります。
それはウディ・アレンの『ラジオ・デイズ』。
これも第2次大戦後直後、ニューヨークのラジオを聞いていた少年の話です。
その少年がラジオから流れる名曲を聴きながら、
当時のニューヨーク家庭エピソードが連発される名作なのですが、
『英国王のスピーチ』と時代設定はほとんど同じです。
『ラジオ・デイズ』はエンターテイメントラジオを聞く側の物語で、
『英国王のスピーチ』は国営放送ラジオを発信する側の物語です。
イギリス王室知識がないからとは思いたくないのですが、『英国王のスピーチ』にはノレませんでした。その理由をココで挙げてもしょうがないので、印象的なカットを1つ。
・ジェフリー・ラッシュ(ジョージ6世のスピーチ先生役)の皺
これはさすがです。皺だけで演技できる、そんな事実に驚きました。
2011.04.03 UP
『トゥルー・グリット』